アイルランドの庭 ブレイへ
今日はダブリン、コノリー駅から郊外へ走る電車、ダートに乗りブレイを目指す。
ブレイはダブリンから南へ電車で40分ほど走ったところにある海辺の町だ。週末になると人が押し寄せるリゾート地だそうで、その自然の美しさからアイルランドの庭と呼ばれているとか。
自動販売機でリープカードを買って、€20をチャージして改札を抜ける。リープカードを買うのも、ブレイ行きの番線を探すのも、すごく簡単でシンプルでわかりやすかった。
車内は少し懐かしい雰囲気。
平日の午前10時過ぎ、車内はすいていてゆったりとしていた。街中を抜け、海が見え南へとどんどん走って行くと緑がわっと視界に広がった。
ヒースの花が咲き乱れ、車窓を叩かんばかりに生い茂って揺れている。石造りのトンネルをぬけると、そこには海岸線が広がっていた。
窓からの景色を楽しんでいると、あっという間に終点のブレイに到着した。
駅を出て、少し歩くとそこは海岸。ものすごく強い風がバタバタと音を立てて吹き抜けて行く。
海から吹き荒ぶケルトの風は冷たくて、そして力強かった。私はパーカーを羽織っていたが耐えられないくらい寒い。日差しが強いからと言ってゴアテックスのジャケットを置いてきたことを後悔した。
それでもこの町に訪れる人々は老人から子どもまで揚々と海へ飛び込み、風に打たれながらも浜辺で体を焼いていた。すごい。でも、今のこの快晴の日々はこの国の人たちのなけなしの夏なのかもしれない。楽しまなくちゃという精神なのか単に体が強いのか、とにかく私には真似できないと思った。
子連れが多く、小さい子たちも海に入ったり、砂浜を掘ったり、楽しそう。犬もたくさんいる。
砂浜は波打ち際のわずかなところだけで、そこから先はゴロゴロとした石が浜辺を覆い尽くしていた。
石は、みな波に揉まれて丸っこくなっている。こんな石だらけの浜辺は初めて見た。なんだかまるで川のようだ。
リゾートっぽくなくて、ケルトの太古の歴史を思わせるような雰囲気を丸くなった石たちが醸し出している。ひとつひとつの石の色や模様に打ち寄せる波がかかるのを見ながら浜辺に座っていると、永遠にここで座っていられそうな気がする。しかし体が冷えてしまい、ちょうどお昼時なのもあってお店を探して歩くことに。ほんとに寒いのに、みんな楽しそうに思い思いの時間を過ごしている。
海岸沿いに建つ海の見えるレストランでクリームクラムチャウダーとアールグレイティー注文した。合わせて€8.5だった。
チャウダーには白身魚とシャケがごろりと塊で入っていて、しっかりした味付けですごく美味しかった。
付いてきたソーダブレッドを浸して食べる。冷えた体がどんどん温まってきた。
そのままブレイヘッドの頂上を目指して歩いていたのだが、いつまでたっても頂上に見える十字架に着かない。
なかなか登る道にでないなぁ…というか海岸線をぐるっと向こうまでまわっている?と思っていたら、なんと隣町のグレイストーンズまで海岸線を6キロ歩くウォーキングコースを歩いていた。
それは頂上にいつまでたっても着かないはず…。ちょうど半分を歩いたあたりで気づいたのだが、気がつくのが遅かった。もう3キロも1時間近くろくな水分を持たずに歩いてしまっていたのだ。ダメだ…と思い来た道を引き返す。
頂上には行けなかったものの、歩いて来た道でたくさんの壮大な風景を見れた。
見渡す限りの水平線に、先程まで歩いていた浜辺と奥に広がる街並み。
海の水はエメラルドグリーンで、美しく、岩場に力強く波を打ちつけている。
海鳥のコロニーもあって、カモメの鳴き声が歩いている間ずっと聞こえていた。命が、自然が広々と眼前に横たわっていて、一瞬一瞬がドラマチック。
岩の大地にびっしりと生えた背の低い緑の植物たち、思い描いていたアイルランドらしい光景に感動する。
空も大きく広がっている。ほんとうに気持ちがよい。
海岸沿いには線路があり、先程乗ってきたダートが走るのが見える。
それがまた良かった。
それにこの島の植物が色々と見れた。険しい岩場に咲く花は野性味と可愛らしさがあった。
なんとか浜辺に辿り着いて、へとへとで喉がからから。移動遊園地に売っていたソフトクリームとファンタで一息。€2のソフトクリームはミルクが濃くてすごく美味しかった。疲れた体に染み渡る。
人がたくさん並んでる小さなお店があり、のぞいてみるとチップス屋さんだった。魚のフライやホットドッグなど、軽食をテイクアウェイのみで販売している。
一番スタンダードなチップス€2.80をオーダー。ビネガーをビッショビッショにかけてたっぷり塩をふりかけたフライドポテトは今までて一番美味しかった。600グラムくらいはリアルにあったが完食。
夕方になりより一層人が増えた海辺。子供たちはボールで遊んだり、大人は座っておしゃべり。まだ海に入る人も。アフターファイブがこれってすごく羨ましいな。
ずっとここにいたい気持ちを振り切って、駅へ向かった。
帰り道のダートはあっという間にコノリー駅についた。